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雄一老見聞録

第十四回 『子供の試合 その二』


 それは、中学校が、30校近く集まって団体戦の練習試合をしていた時のことです。

 その中に、前年度カデットのランキング選手がいました。彼がこのような試合に対してどのような心理状態で戦うかを見ようとして、彼を中心に試合を見ていました。
 殆ど試合になりません。これは仕方のないことです。一方はランキング選手、相手は中学生になってから卓球のクラブに入り、まだ一年半ぐらいしか経ってないのですから。

 ランキング選手が、「俺は強いんだぞーー」という態度で試合をするのか、自分よりはるかに弱い相手と試合をしても自分の練習をすることの出来る選手かなと言う興味が大きかったのです。

 見ていて大変感心しました。自分から仕掛けてポイントを取りに行かないのです。相手の変な回転のボールを丁寧に足を使って正確に、早いタイミングで打ちながら凡ミスをしない事を目指しているように思えました。
 実力的に自分よりうんと下の選手を相手に、これも一つの練習方法だなーーと感心しながら見ていました。すーーーと頭の中に浮かんだ光景......今から約20年前の練習場の風景を思い出しました。

 何年か前に、東京に他の用事がありましので日程を合わせて、全日本卓球選手権大会を見に行ったのです。
 MIXダブルスの決勝を見ると、何と小学4年生の時に私のお手伝いしているクラブに入って、6年生の時にホープスの準決勝で、裏表同色でバックアンチのカットマンに負けた子が、コートに入っていました。しかも優勝したのです。彼は同時に男子ダブルスでも、クラブと大学での後輩と組んで、ランキングに入りました。

 この、彼「橋本正浩」選手が、中2の頃は子供の世界では全国的に名を知られていました。その、彼が、クラブの練習日には一番先に来て、漫画を読んでいます。
 そこへ小学生が来ます。すると、彼は「打とう」と声をかけます。
 小学生は、喜び勇んでそそくさと支度をして台につきます。
 少しフォアハンドで打っていますが、バックハンドに変わります。彼は左ですので右の子供とは一見フォアのクロスうちの様に見えます。
 どんな初心者とでも、最初に来た子に「打とう」と声をかけて、それなりに練習をしていました。殆ど経験のない子との練習は、どこへ飛んできても、その子のラケットに当てに行っているように感じました。

 同じ様な事をしているなーーーーと....クラブの伝統かも....

 ランキング君の試合は、少しはラリーが続きますが、ポイントは限りなく「0」に近い試合になります。

 試合は団体戦です、ランキング君の学校は、まともに卓球の出来るのは彼一人です。後の子は、中学校へ入って卓球を始めた子ばかりです。
 相手の中学校は前年全国中学校大会に団体戦で出場して、その年も結果として出場した地方では強豪チームです。

 ランキング君がトップに出てきました。強豪チームはカットマンです。
 スマッシュを一発も打たないでので、比較的ラリーが続いて、見た目には結構良い試合の様に見えています。
 一セットが終わりました。カットマン君は顧問の先生に報告に行きます。顧問の先生は、その日、役員として本部席で進行係りをされていました。たまたま私はその先生の近くにいました。

 生徒:「負けました」
 先生:「何本か?」
 生徒:「8本です。」
 先生:「そうか、次は10本以上とれ!!」
 生徒:「ハイ」

 2セット目が終わり同じように報告に来ました。

 生徒:「負けました。」
 先生:「10本以上取ったろうな!!」
 生徒:「−−−−」.....モジモジ
 先生:「何本か!!!」...目に怒気
 生徒:「6本..」.....小声で下を向く
 先生:「聞こえん!!」...声にも怒気が
 生徒:「6本です」.....前より少し大きく
 先生:「よくも俺に恥をかかせたな!!」言うより前に一発平手でバッシ
 生徒:「−−−−」
 先生:「行け!顔を見たくない」
 
 ランキング君2セット目は、正確にカットを打って、スマッシュとはゆかないまでも強打が比較的正確に入っていました。しかもバッククロスしか強打をしないのですから、ミスはあまり出ません。カットマン君の得点の6本うち何本かはランキング君の打ちミスです。カットマンの子は、自分で取ったポイントはないに等しいぐらいの試合なのです。全く力が違うのですから、仕方がないのです
が、負けたらダメ!!の様です。

 カットマン君頑張って、打たれたボールを結構よく止めていたのですから、私は、よく頑張ったな、と思っていたのですが。

 2番が始まります。
 一セット目の報告
 
 生徒:「勝ちました。」
 先生:「何本か?」と言いながら右手を出して握手する
 生徒:「7本です」
 先生:「そうか、次は7本以下にしろ!」ニコニコ
 生徒:「ハイ」

 二セット目の報告

 生徒:「勝ちました」
 先生:「何本か?」握手する
 生徒:「8本です」
 先生:「そうか、まあまあだな!よし!返ってダブルスをみてやれ」
 生徒:「ハイ」

 一番のランキング君と、カットマン君の力の差より、二番のランキング君のチームの子と、カットマン君のチームの子との力の差の方が大きいのです。
 なのに、何を基準にほめたり、叱ったりしておられるのか??

 どうやら、日本チャンピオンに負けても、殴られるのかな?
 卓球を始めたばかりの小学生に勝っても褒めて貰えるのかな?と思いました。

 絶対に勝てない相手でも、負けたら、平手打ち!!
 絶対に負けない相手でも、勝ったら握手!!
 しかも、「俺に恥をかかせたな!」とは、呆れかえりました。
 卓球の指導者としての資格全くなし!!教育者!?とんでもない!!

 自分中心の、得手勝手な大人としか言いようがありません。全く子供たちに対する愛情のかけらもない、子供たちのおかげで前年、全国大会に出させてもらったと感謝すべき所を、たぶん「俺のおかげでおまえらは全中にゆけたのだぞーーー」
と言って居られるのだろうと想像しました。

 かわいそうな子供たちです。
 こんな事は、ほんの一部の事であって欲しいのですが。

 続く

雄一老(yuu@Pingpongfan.net)


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