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雄一老見聞録

第十二回 『ベンチ その五』

 前回、彼女「そーやろーなー、考えとくわ−」で終わっています。

 大切なことは、戦略・戦術を考えさせることだと思います。たとえその考えが間違っていたとしても、何も考えないで勝ったり、負けたりするよりは、彼女の将来にとってなにがしかの成果が期待できると思います。
 その考え方で、勝てれば、「これで良いのだな」となるし、負ければ「この考え方は通用しないのだな」と反省のきっかけになります。

 急成長している当時のことですので彼女は覚えてないかもしれませんが、私は、一言一言が、記憶に残っています。惚けの始まるこの年になりますと記憶が曖昧になって来るのですが、私にとっては、この時のやりとりがその後の卓球感に対して、大きなきっかけでしたので、収縮し始めた脳の中にでも深く刻まれています。

 一セット目の休憩の時の短い会話がなく、そのまま戦って二セット目を落としし、セットオールになったら短いサービスを中心に組み立てる様にと言うつもりではあったのです。なぜなら、少ない本数ではあったのですが、ショートサービスからの得点率は100%だったのです。しかもそのレシーブたるや全く格好になっていなかったのです。
 ショートサービスからの得点率について本人は、気がついてなかった様です。

 彼女は両ハンドからロングサービスを出しての展開が得意なのです。自分のバックハンドショートが威力があることを本人が知っていました。

 ですから一セット目はショートサービスはあまり使っていなかったのです。
 ロングサービスからの得点率、レシーブからの得点率は、50%くらい、ただ何本か出したショートサービスからの得点差が、一セット目を彼女のものにしたと思っています。

 ノーバウンドでとっているのではないかと思えるほど早いタイミングでのナックルショート・全身を使っているようなプッシュ・サイドを切る横回転のショートを使って相手を崩しておいて横殴りのフォアハンド一発が、彼女の得意な型ですので、ショートサービスを使えとは言い難いのです。

 自分で、言い出して、自分で工夫して、ショートサービスを多用したとはいいながら、やはりロングサービスからの自分の型を多用していました。
 言い換えますと、ロングサービスをより有効に使うためにショートサービスを本能的に多用したのではないかと思います。

 と言う言い方は、彼女が本能的に組み立てたものを、私が勝手に解説者風に見て書いたものです。

 一セット目を落として、2セット目にショートサービスを多く使えと指示したとしても、どのような結果になったかこれもまた一つの試合でしょうが、難しかったかもしれないと思います。

 本人としては、ショートサービスが効いてるとは漠然と思ってはいても確信ではない。そこへ、ベンチから、自分としてはあまり得意でない「ショートサービスを多く使え」と指示されると彼女としては、得意な型ではないのでショートサービスを使うについての不安感があると思います。

 得意なロングサービスからの展開は今まで数多く使って来ているので、そんなに不安はないが、ロングサービスをより有効に使うための撒き餌の様なものであったショートサービスを中心に戦えと言われては不安の方が大きのではないでしょうか?

 自分で考えた(指示された、負担感がないので)上での、ショートサービスからの展開なので、あまり得意でないパターンからでも気楽に入れたのだろうと想像しました。
 
 また、自分で考えた上でのショートサービスの多用なのでもし、うまくゆかなかったとしても、簡単に作戦変更出来たと思います。
 点数は競っても一セット目と同じような流れでは、十分戦えたとは思います。

 ベンチが指示してのショートサービスからの展開が、たまたまエッジ・ネット等で2〜3本うまくゆかない状態がおきますと、選手は不安になって来て、その上ロングサーブからの展開もうまくゆかなくなり、「ベンチがよけいな事を言ったばかりに」苦戦させ、負けさせる事があるなと考えさえられました。

 試合中は選手と全く同じ目線にはなれないが、出来るだけ同じ目線になる努力をし、選手と一緒に戦って、選手の心理状態を想像し、次のセットに選手の持っている技術の範囲で、如何に戦うかを冷静に考える。

 試合を見ていて、こうすれば勝てると言った様なことは少し卓球を知っている人には分かることなのですがでは、その選手がそれが出来るかどうかと言うことが問題だと思っています。大人の眼で見て、こうすれば勝てるのにと分かったからと言っても、そのままアドバイスされたら選手はたまったものではありません。

 特に子供の試合でベンチコーチに入った時、試合を見て、いろんな作戦が浮かびますが、練習中にやった事もないような事をやれとは言えません。選手のできる範囲のアドバイスでなければならないと思っています。
 アドバイスは、一つで良いと思います。あれもこれも云いたいことはたくさんありますが、いろんな事を言っても選手の耳には入らないと思います。選手を迷わすだけだと思います。

 できたら、選手自身に考えさせて、うまく誘導して結論を出させ、その考えがベンチと同じなら最高だと思います。その試合で勝てようが、負けようが大いなる成果のあった試合だったと考えても良いのではとないかと思います。

 ベンチに入ることになって、最初に言われた「負けた時は何も言うな!!」の中に「選手を惑わせる様な、よけいな事は言うな!!」も含まれていたようです。

 いくら子供だとは言えあくまで、選手が主役で、ベンチは脇役なのですから..

雄一老(yuu@Pingpongfan.net)


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